健康住宅研究所
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岩前教授 トークセッション<後編>
2024.10.10更新
近畿大学副学長 岩前篤 教授 スペシャルトークセッション<後編> -「学び」と「共育」が生み出す企業の力
前編・後編でお届けする、岩前教授×健康住宅のスペシャルトークセッション。 前編では、近畿大学副学長、岩前篤先生による「健康な住まい」の在り方についての講演をご紹介しました。 後編では、健康住宅代表畑中直と専務の畑中弘子、岩前教授の3名によるトークセッションの様子をお届けします。トークセッションのテーマは「学び」。人口減少が問題となっている日本ですが、学びを通じて解決できる可能性があることについて、大学で教鞭をとられている岩前先生にお話しを聞きました。
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岩前 篤 教授
近畿大学副学長 建築学部教授 建築学部 建築学科 総合理工学研究科所属 建築物における健康で快適でエネルギー性能に優れた住宅を研究。日本・アジア気候特性と暮らし方に基づく計画手法、ゼロエネ技術、健康維持増進技術を対象とした研究 -
健康な住宅としての高断熱住宅は、日々圧倒的な機能の進化を続けています。企業にはいち早く技術の進化を取り入れ、生活者に提供していく姿勢が求められるでしょう。 まずは畑中社長から、学びと研鑽についてお話しいただけますでしょうか。
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畑中代表
私ども健康住宅が創業したのは、今から27年前。当初は学ぶための余裕は全くなく、とにかく業界で生き残るために、何らかの差別化できる商品を生み出さなくてはという思いで取り組んでいました。その中で出会ったのが、ある1棟の高性能住宅です。 27年前の住宅業界にとって、家はとにかく建てるもので、今ほど性能へのこだわりはありませんでした。そのような時代に高性能住宅を建てられたお客様が、とにかく自分の建てた家のことを嬉しそうにお話しされるのです。しかもそれはデザインや機能ではなく、空調をつけなくても家全体が快適だという、住宅そのものの性能についてのお話でした。 これが私にはとても印象的で、「この家を建てれば絶対に業界で生き残っていける」と直感的に思いました。健康住宅が外断熱にこだわっているのは、このときの高性能住宅が、外断熱工法であったのがきっかけです。 元々は業界で生き残るために取り組んだ高性能住宅ですが、猛勉強してみると本当に面白くて。高断熱住宅での気密の取り方や、なぜそうするのかの理由まで学ぶようになりました。 学ぶことで、道は開けていくと心から感じた出来事です。 -
以前、畑中社長から「幸せになるために必要なのは、その仕事を好きになることだ」と伺いました。畑中社長はご自身の経験を通して、経営者として仕事の楽しさを提供するマインドセットを、特に意識されていると感じます。 さて、健康住宅では「機能と美と健康」を新しいブランドミッションに掲げています。 この中の「美」にはデザイン面だけでなく、人間性の美しさも含まれていると伺いました。 畑中専務は、教育で大切なのは共に育つ「共育」だとおっしゃっていますが、その点はいかがでしょうか。
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畑中専務
共に育つ「共育」というのは、まさに私の実体験から得た言葉です。 私には18歳になる娘がいますが、娘の成長に伴って私自身も母親1年生、2年生と成長してきました。私のように、自分自身も子どもと共に成長したという実感をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 そして今、私は社員のみなさんをお預かりする立場です。入社1年目は、本当に何もわからないからこそ、こちらも教える教育をしなければなりません。しかし3年、4年と経験を積んでいく中で、社会に揉まれながらも次第に慣れ、自ら学んでいくようになります。社員のみなさまの自立をサポートするために、私は「新入社員弘子塾」を開講し、3ヶ月間にわたって社員教育の価値観をお伝えしています。 仕事は、生涯にわたって付き合っていく相手です。生きていくため、食べていくための仕事は「ライスワーク」と呼ばれますが、せっかく働くならば、やはり大好きな仕事に取り組む「ライクワーク」でいてほしいと思っています。 生涯働き続けられる企業であるために、子育てしながらの業務をサポートするチャイルドルームの設置など、会社としての支援を続けてきました。その根底にあるのは、ここで頑張りたいとチャレンジする人を、応援したいという強い気持ちです。 社員の皆さんがチャレンジする姿に、私たち自身も、本当に日々育てられていると感じます。 大切な住まいを建てるなら、お客様もやはり前向きにチャレンジしている会社に建ててほしいと思います。また上司と部下の関係でも、チャレンジしている人にこそ育てられたいと感じるのではないでしょうか。社会で本当に必要とされる企業であるためにも、社会と共に育つ「共育」が、今後一層必要になっていくと考えています。 -
これまでは、正しいものと間違っているものを区別する「正誤思考」が主流でしたが、今の若い世代はお互いの意見を聞きあう「相違思考」の教育を受けています。 ある種のジレンマを抱える中で、教育者の視点としての企業への期待を、ぜひ教えていただけますでしょうか。
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岩前教授
教育の立場でも、ここは非常に難しい話だと思っています。 教育は本来、お互いに影響しあって変わっていくものですので、望ましい方向に行くこともあれば、共につぶれてしまう場合もあるでしょう。そうならないためにも、何らかの方向性は不可欠です。しかし健康住宅さんにはビジョンとして進むべき道が示されています。迷ったときにはそのビジョンに合うか合わないかを、みなさんで一緒に考えていく。それがとても大切だと思います。 企業では、ぜひ「働くこと」の意味を、実際に働きだす前に今の若い世代の方に伝える場を作ってほしいです。インターンシップという仕組みはありますが、企業によっては広報宣伝活動の意味合いが強いため、本当に働くことの意味までは学生に伝わっていないと感じます。 良い人材が作られれば、必ず世の中は変わります。 人間関係を充実させ地域の中で育てていくのは、非常に大きな意味のあることではないでしょうか。 -
一度社会に出ると、人はなかなか自分のためには学べないものですので、学ぶ場を提供するのも、企業としてのあるべき姿です。この誰かのために学ぶ、共に学びあうという姿勢こそ健康住宅の本質かと感じますが、いかがでしょうか。
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畑中代表
「情けは人のためならず」という諺がありますが、勉強もそれと同じです。自分が一生懸命に学んだ成果は、必ず自分にかえってきます。 私にできるのは、社員のみなさんに「学ぶっていうことは本当にラッキーなことなんだよ」「学ぶことはあなたが幸せになるための1つの手段だよ」と伝えることではないでしょうか。一企業の代表を務める身として、そのように感じます。 -
より良い世の中になっていくためにも、学ぶ意識は不可欠ですよね。 岩前教授、日本は今後人口減の世になると言われますが、そこを課題として考えることで、明るい未来が見えてくると以前おっしゃっていました。その点お話しいただけますでしょうか。
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岩前教授
人口減になる未来については、非常に悲観的な思いが多くなっていると思います。ただ先進諸国を見ますと、人口が7,000万人や8,000万人でも、国は十分維持できます。AIの台頭や仕事の割り振りといった課題はありますが、やはり一番問題なのは、悲観的なビジョンの中で何もしないことです。ネガティブな側面に捕らわれるのではなく、今できることに注力すれば、明るいポジティブな世界になっていく可能性があります。 悲観的になりすぎずに、今できることの工夫次第でより良い社会への移行も叶うのではという、1つのビジョンとしてお伝えします。
トークセッション スペシャルゲスト
トークセッション 健康住宅代表 畑中 直
トークセッション 健康住宅専務 畑中 弘子
健康住宅の「学び」のはじまりは、1棟の高性能住宅との出会い
共に育つ「共育」こそ、生涯取り組むべき姿
「人」が作られれば、世の中は変わる
「学び」は、自分自身が幸せになる手段
対談を終えて
トークセッションの中で一貫してお伝えしてきた「学ぶ」ことへの必要性。
今後の社会では教える側も教わる側も育っていく、「共育」という考えを持ち成長していくことが求められると思います。
健康住宅は学びへの意欲や、挑戦への土壌が育まれた企業です。
「機能と美と健康」をお客様にお届けするために、これからも励んで参ります。